二ノ刻 逢坂さん
逢坂「……十と…五年振りの外の世界……。
あたしは奥の間で、この老婆と縁先に座ってお茶を飲んでいた。
幽霊と一緒にお茶してるのって、世界でもあたし一人くらいじゃないかしら。
逢坂「八重だと…思ったんだがねェ。また別の双子さんかい…。
澪「森で迷ってたら紅い蝶が飛んでて…それを追いかけてたらこの村に着いたの。
逢坂「成る程。…紅い蝶か。アレがまた村に人を誘って来たのか…。
澪「いつも変なお姉ちゃんが、ここに来て更に変になっちゃうし……。
庭先の木が大きく揺れる。何枚かの葉が飛んで行く。
逢坂「この村ではね…双子は……重要な意味を持っとるんだよ。
茶碗を置いて、逢坂さんが遠い目で中庭を見る。
逢坂「十年に一度、×の前で、双子の巫女が××すると、村に安息が訪れると……。
もう一度木が大きく揺れた。あたしの髪に葉っぱが一枚当たる。
澪「何ですか、×の部分。訳のしようによってはCERO18になりかねませんよ。
逢坂「それは禁じられた場所でな、見てはいけない、口にしてはいけない、書いてはいけないとされておる。
澪「ああ、そう言う事ですか。…安心しました。
逢坂「そして××の時は必ず姉が下になるというのが決まりだ。
澪「前言撤回していいですか?何でそこで上やら下やら出て来るんですか。
そこまで言うと逢坂さんは、あたしの方を見た。
澪「すいません、前例から言ってそこであたしを見るのはどう言う事かは分かるんですが
その期待に答える事は出来ませんと言うかそれ以前に………
逢坂「今年辺りが…祭りの年だ。だからあたしの眠りも浅くなっていたのだろうて。ちょうど良い時に双子の客人(まれびと)だ。
澪「いや、だからねお婆ちゃん。
逢坂「巫女となり、あのお姉ちゃんと××して、この村に落ち着きをプレゼントしておくれ。
澪「ヤです。それだけは絶対ヤです。今すぐ帰り道教えて下さい。
家の外から人の気配がする。それも次々に増えていく。
澪「な…何?
逢坂「おお…皆起きだして来たようだ。…やはり今宵が祭り時だったか……。
逢坂さんの目が光った。フェイタルフレームだ。
あたしはまた、弾かれたように逢坂さんから逃げ出した。
家の入り口、囲炉裏の間まで来た時に、あたしは何かを蹴り飛ばした。
澪「え!?
それは見た事の無いデザインの、とても古いカメラだった。カメラは壁に激突して、あたしの脚元に転がって来た。
澪「カメラ…?来る時にはこんな所には何も……。
手にとってみる。ひどい衝撃だったが壊れてはいないようだ。
澪「…これは……手記?
カメラを拾う時に、まるでカメラにくっ付くように一緒に拾い上げた古書らしいもの。
「射影機覚書」
澪「このカメラの使い方、かな。
あたしは前髪を少し上げて、その覚書を読んでみた。
澪「………。
奥の間では今ごろ逢坂さんが体を軋ませながら追って来てるのだろうか。
でもあたしの目はその覚書に釘付けになっていた。
澪「……特殊なフィルムの装填で…除霊に似た効果……。残留思念を写し出す能力………!?
こんな物が…どうしてここに?お姉ちゃんが落とした?
澪「……射影機…。
逢坂「待つんじゃ、お嬢ちゃん…!!
奥の方から、何処から持って来たのか杖をつきながら逢坂お婆ちゃんが出て来た。
澪「逢坂さん、幽霊ですか?
逢坂「?
言われてみればと言う顔になって、逢坂さんは立ち止まった。
逢坂「まぁ、闇に飲まれた者は、それと変わらんかもな…。ああいや、それよりお嬢ちゃん………
あたしは射影機を逢坂さんに向けて構えた。
途端に逢坂さんは慌てた。
逢坂「おおっ!イカン!いかんぞそれは!!そういう物を霊に向けるなと教わらなかったのかい!!
澪「あたしを追って来るなら、一枚記念に撮影させてもらいます。
逢坂「待てと言うに!まず落ち着けお嬢ちゃん!!そうじゃ落ち着きが大切じゃ!!
澪「逢坂さんが落ち着いて下さい。
Copyright (C) 闇薙帝夜(やみなぎ ていや) 2003