四ノ刻 怨霊との戦闘
結局あたしは、村を出る為にどうしてもお姉ちゃんを捜さなきゃならなくなった。
澪「もう…お姉ちゃんは…。その痛む脚で歩いちゃ駄目なのに……。
逢坂「向こうもお前さんを捜してる。そう気落ちする事もあるまいて。
澪「そうじゃないのよ。お姉ちゃんはあたいのカラダ狙ってるの。分かる?カ・ラ・ダ。
逢坂「くれぐれも××は×の前でな。
澪「行って来ます。
逢坂「ああ、夕飯までには戻るんだよ。
逢坂家から一歩外に出る。来た時と全く変わらない静けさ。
さっきのざわめきは何処へ行ったのだろう。
澪「…お姉ちゃん!
あたしはとりあえず村の中を回って見ることにした。一回見ればその場所は大体覚えられる。迷う事は無いだろう。
逢坂さんのお屋敷の他にも、幾つか大きなお屋敷が見える。
それぞれ表札に「桐生」、「立花」、「槌原」。
後はその屋敷と屋敷の間に点在する小さな小屋のような家。多分村人の家だと思う。
澪「…皆神村……。もし聞いた噂が本当なら……。
道の所々には双子地蔵。双子の絵が彫られているのだが、必ず片方の首から上が無い。
澪「……地図から消えた……村…。
あまり近づいてはならないと言われた森だったが、あたしとお姉ちゃんにとっては思い出の森。
もうすぐダムの底に沈んでしまう…。だから今日、もう一度二人でやって来たのだ。
澪「それが…こんな事になるなんて……。
逢坂さんから貰った懐中電灯で暗闇を裂いて、あたしは村を回った。
見上げると、二つの家を渡り廊下が繋いでいた。
澪「……何だろう…。桐生さんと…立花さんの家……繋がってる…。
その真下まで来た時、渡り廊下から突然、女の顔が出て来た。
澪「…うわッ!?
あたしは後ずさった。
そのまま女の人が、身を乗り出して渡り廊下から飛び降りたのだ。
あたしは頭を抱えたまましばらく動けなかった。
落ちた…?あたしの前に……?音…した……?
そーっと顔を上げると、あたしの脚元に首の圧し折れた着物の女の人の姿が。
澪「あう…あ…ッ……!
再び腰が抜けてその場に座り込んでしまった。
「……痛い… …痛い… … …
そう言いながら女の人はあたしに近づいて来る。
澪「い…イヤアアっ!!
あたしは思わず、射影機をその女の人に向け、シャッターを切った。
澪「きゃあああああッ!!?
カメラと女の人との間に物凄い閃光が……次の瞬間、あたしは後ろへ大きく弾かれた。
背中を石壁に叩き付けられ、頭が一瞬真っ白になる。それでも何とか意識を失わずに、目の前を確認する。
さっきの女の人がいない。あたしがゆっくり立ち上がったその時、すぐ横から声がする。
「八重……。どうして……今頃………。
すぐ横にさっき飛び降りた女の人が。
「村は……もう…… …何故帰って来た…… …この苦しみ… …
あたしの首に手が伸びる。頭が混乱して動けないあたしの首に。
「…お前も…… …
コロサレル。
あたしの頭の中に、その言葉だけが鮮明に焼き付いた。
シニタクナイ…シニタクナイ……
首を締める力が強くなる。
シニタクナイ… …ナラ… … …闘え……!!
あたしは首を締められたまま、女に射影機を向け、構えた。
…射影機が震えている。
……覗いた画面の中央の霊波計が、紅く振り切れている。
あたしはもう一度、今度はしっかりと女の姿を中央に定め、シャッターを押した。
また物凄い光が二人の間を走った。
だが今度は女の方が後ろへ大きく吹き飛ばされた。
Copyright (C) 闇薙帝夜(やみなぎ ていや) 2003