七ノ刻 桐生家の双子巫女
澪「はぁ……はぁ…… …ッ…
扉を閉め、何かで押さえようとしていると、重い鍵が勝手に降りた。
澪「え!?
もう扉は開かない。扉自体もビクともしなかった。
澪「そんな……!?
その時、あたしは背後に冷たい視線を感じた。
「……オキャクサン…。
あたしは反射的に振り返って、声のした方を見た。
破れた襖の穴から、髪の長い子供が二人、こっちを見ている。
二人ともその長い髪で顔は見えない。だが、どうみても…双子だ……。
「…お客さんだよ。
「オキャクサンダネ……。
そう言うと、双子の姿は障子の向こうの部屋に消えた。
澪「…双子……?
ハッと思い出して、あたしは玄関の扉から離れた。
澪「……お姉ちゃんは………
扉には何の変化も無かった。お姉ちゃんが追って来てる気配も無い。
澪(建物には入れないの?……なんて都合のいい事ある訳ないか…。
それでもここでじっとしてても何も変わらない。
澪「…祭主に会おう。この祭りを取り仕切ってる人なら、絶対何か知ってる。人間のお姉ちゃんを返してもらおう…。
玄関を上がって、右に位置する廊下から、部屋に入る。
さっき双子が居た部屋だ。
澪「…あいたッ!
部屋に入っていきなり何かが頭に当たった。
澪「……人形だ…。…え?
その部屋には数体の人形が、天井から縄で首を吊るされていた。
澪「あ…悪趣味ぃ……。お姉ちゃんでもここまではやらないわよぉ……?
人形を見ていると突然、あたしの両脇にさっきの双子が現れた。
澪「…!!
「いらっしゃい…お姉ちゃん……。
「イラッシャイ…オネエチャン……。
ステレオでそう言うと、二人はパタパタと奥へ向かって走り出した。
澪「あ…待って!…あいたッ!
「お客さんだね……。
「オキャクサンダヨ……。
顔を上げた時には、二人の姿は無かった。
澪「いや…レフトの方ちょっとノイズ掛かってて調子悪いんじゃないの!?
ブラブラ揺れてる人形を避けて、あたしも双子の向かった奥の方へ進んだ。
澪「鍵…探さなきゃ。この家と向こうの家……。
廊下を通って、いくつかの部屋を通り抜けて行くと、また廊下が目の前に広がった。
澪「はぁ…何なのこの屋敷。こういう造りが流行ってるの…?
箱や、箪笥などを念入りに調べて回っているが、家具や着物ばかりで、肝心の鍵は見当たらない。
澪「……何か泥棒みたいな気分…。
少し広めの座敷を見つけたので、そこで休憩する事にした。
部屋の真ん中で脚を伸ばして休んでいると、また何の前触れも無く、右隣にあの少女が現れた。
澪「………。
この村に来て、多分あたしの寿命は相当縮まっただろう。もうやめて、突然は。
あたしのすぐ隣で、正座している着物の少女。…動かない。微動だにしない。
表情はやはりその長い髪で隠されて分からない。
いつまでも二人で無言の闘いを続けていても仕方ないので、あたしは話し掛けてみた。
澪「お嬢ちゃん……お名前は…?
「…あアかザねミ……。
本気で飛び上がった。
ステレオ!?反対側にも居るし!!
あたしはバッチリ双子に挟まれる形で、さっきからずーっとこうしていたの!?
茜「………。
薊「………。
心臓の早い鼓動がまだおさまらない。また沈黙の時が流れた。
澪「か…鍵……。黒澤さんトコの一つ目の門の鍵は…何処にあるのか……知らない…かな?
声が震えている。この日本人形×2は心臓にかなり悪い。
茜「…あたしが…持ってるよ…ねぇ、薊。
薊「…チガウヨ……アタシダヨ?……オネエチャン…。
澪「いや、どっちでもいいから持ってるんなら貸して下さい。
……あたしの言葉は聞こえていないようだ。二人で「違うよ」「チガウヨ」の闘いが始まった。
やがて二人の声がピタリと止んだかと思うと、声の感じが変わった。
茜「…薊、紅贄祭が近づいてるよ…。
薊「…チカヅイテルネ、オネエチャン。…ジュンビシナイト……。
そう言って、二人があたしの着物の袖を引っ張り始めた。
澪「え?なに?何?
茜「……巫女は禊を行わないと…。
薊「…コノオネエチャンガ…ミコ……。
澪「ちょっと…やめてよ!破れるでしょ!!
くっ付いて来る双子を振り放すと、二人ともスゥ…と消えてしまった。
Copyright (C) 闇薙帝夜(やみなぎ ていや) 2003