八ノ刻 茜と薊
その直後、射影機が震え出した。
澪「…これは!?
射影機の震え。霊波計の針が小刻みに揺れている。
槌原さんと闘った時と同じ……この双子はあたしを襲おうとしている…?
「……ドウシテコロスノ?
その声に反応して射影機を構えると、正面から着物の少女が向かって来ている。
澪「仕方ない…。少しお仕置きが必要ね。
あたしは、霊波計が紅く振り切れるところまで少女を引き付け、シャッターを押した。
「キャアッ!?
射影機と少女の間に光が走り、少女がその場に崩れる。
だがそれと同時に、あたしの首に手が回り、グイグイと締め始めた。
澪「うあ…ッ!?
いつの間に間合いを詰めたのか、もう一人があたしの背中に張り付いて首を締めてくる。
澪「やめて…苦しい……やめなさいッ!!
背中の少女を思いっきり振り解く。畳に叩き付けられた少女は、また消えてしまう。
澪「…一人は囮で二人がかり?子供にしては面白い戦術を…。
「ドウシテコロスノ…?
再び部屋に二人の声が一緒に響いた。今度は左から少女が歩み寄って来る。
澪「二回目は無理って話よ。
あたしはすぐに部屋を見回した。二人一度に纏めて撮ってやるつもりだった。
澪「あ…あれ?
だが…もう一人が何処にも見当たらない。
近寄って来る少女から少しずつ後ずさりながら、部屋を見回す。それでも、もう一人は見当たらない。
澪(霊波計は今見えている少女にしか反応してない……。もう一人は…!?
壁に追い詰められた。どうしようもないので、迫って来る少女に向けてシャッターを切った。
ガシャンという音と一緒に、少女がその場に崩れ落ちる。
と、同時に今度は目の前にもう一人が現れて、あたしの首を締め始めた。
澪「うあ…あッ……!?そんな…何処から……!
子供の力でも…苦しいものは苦しい。
澪「お…お前ら上等だあああぁぁぁ!!
力を振り絞って少女を引き剥がした。また、少女は壁に当たって消える。
澪(やばぁ…頭フラフラして来た……。早くしないと…。
いやほら、あたし主人公でしょ?こんなトコで子供にやられましたって冗談にもならないのよ。
考えるのよ…。考え………そう言えば何でこの女のコ、射影機最大の力で吹き飛ばない訳…?
さっきから本当に攻撃が効いてるの?射影機で一瞬怯んだようにしか……ガシャン?
ちょっと待って、さっきのガシャンって何よ。更に突っ込ませてもらうと声もいささかノイズ入って変だし……まさか…?
「ドウシテコロスノ?
三度、その声が部屋に響く。今度は分かる。変なノイズ入ってるし……カタカナだし。
あたしは射影機を片手に、その少女に真っ直ぐ向かって行った。
そして少女が両腕を広げた瞬間―――あたしの長い脚で、脚払いを掛けてやった。
ガシャン!少女が顔から畳に沈んだ。倒れた時に大きな音がなる。
澪「人形!!……そして本物は………!
射影機が震え出す。あたしはすぐにそっちを向いて構えた。
…今、まさに飛びかかろうとしていた少女が、激しい衝撃と共に壁に吹き飛び、激突した。
立ち上がろうとしていた人形が、もう一度大きな音を立てて畳に沈む。
二人はすぐに姿を消した。
澪「…ニセモノに攻撃すると、その隙に本物が空間転移みたいな事して、一気に襲い掛かって来るのね。
人形も放っておくと攻撃してくるし……楽しい事考えられるよね、双子って。分かるわぁ……。
「…どうして殺すの?
四度目の攻撃。後ろから歩いて来る。
澪「性懲りも無く…。可愛いお嬢ちゃん達ね。
こちらへ向かって来る少女に、軽く脚払いを掛けて―――あたしが背中から畳に倒れた。
そして上からその少女が乗っかって来た。
澪「あ!!今度は…囮が本物!?…み…見破られたらすぐ手を変え…て……!
幽霊のはずなのに、やたら重い。
澪「うぅ…ううん………!
動けない。少女が物凄い力で抱き付いてくる。そろそろイヤな予感がして来た。
「…コロシタクナイ……。
予感は的中した。人形があたしの顔を覗き込んでいる。
澪「いや…ダメよ、お嬢ちゃん……?幽霊でこんなに重いんだから、人形のアンタまで甘えちゃ………
「……アタシモ………
人形がぐらりと前に倒れた。
澪「いやああああぁぁぁぁぁ!!!!
………
……
…
澪「…んん……?
気が付くと、寝転がっているあたしを、双子が上からじーっと覗き込んでいた。
茜「…気が付いたよ……薊。
薊「…メガサメタネ…オネエチャン…。
あたしが痛む頭を押さえて起き上がると、薊が射影機を差し出してきた。
澪「あ…ありがと。
すると、二人はあたしの傍を離れ、手を繋いで北の廊下へ向かって行く。
あたしには付いて来いと言ってるように見えた。
二人に近づくと、扉をすり抜けて奥に向かう。あたしも扉を開けて、二人に付いて行った。
北の廊下を右に曲がり、西へ向かい、更に右に折れた所で、紅い扉が見えた。
澪「…?さっき…ここにこんな扉あったかしら……?
二人が入った後を付いて行く。
澪「わ…!
人形の間。たくさんの雛壇に、たくさんの雛人形。
ただ奇妙なのは、その人形の中に、一体も男の人形が無いと言う事だった。
部屋の一番奥にある二つの鏡台の前で、二人がこちらを向いた。
茜「……楽しかったね…。
薊「…マタイッショニアソボウネ………。
そう言うと、二人が鏡台に向かって座る。
その瞬間、二人は動かない―――ただの人形になった。
澪「………。
座する人形の前に置かれた鏡台。それを調べると、双子地蔵の絵の描かれた札鍵を見つける。
半分に割れているが、この形は間違い無く、あの大きな門の鍵だった。
澪「………遊びたかったの…………。
もう二人は何も言わない。動かない。
大きな音が聞こえる。
目の前にある雛壇が真ん中で二つに割れ、その中から地下へ降りる階段が現れた。
あたしは札鍵をしっかりと仕舞うと、梯子を降りて行った。
「…マタイッショニアソボウネ………
Copyright (C) 闇薙帝夜(やみなぎ ていや) 2003