第一章 予兆
辺りは漆黒の闇一色に染まり、自分の姿さえも確認出来ない。
・・・いや、自分が本当に其処にいるのかもわからない。
まるで自分自身が闇そのものの様にさえ感じる。
・・・此処は・・・何処・・・?
辺りを見回しても何も見えない。・・・いや、遠くに何かが見えた。
何故か其処だけに光が当たっている様で、そちらに向かって歩いてゆく。
どうやら姿が見えないだけで、其処にはちゃんと存在しているらしい。
其処に近づくにつれて、何かが見えてくる。
遠目ではあるが、其処には数本の桜の木が見え、桜花は満開に咲き乱れ、既に桜吹雪が舞っている。
そして桜の木が囲む空間の真ん中に一人、人が立っている。
徐々に近づいてゆく。その距離が10m程までに詰まる。
此処からなら人の特徴もよくわかる。その人物はこちらに背を向けた状態で上の月を眺めている様だった。・・・?
何時の間に月が・・・?自分の姿も見えている。その人物は左手に何かを持っている。
「・・・・・・っ!?」
天倉 澪は驚愕した。その人物、その人物には見覚えがある。
いや、あるなんてものではない、それは自分だった。
いや、それも違う。同じ顔ではあるが自分ではない。
それは紛れも無い自分の・・・・・・そして澪が何よりも驚いたのは、それが左手に持っている物だった。
「何で・・・」思わず呟く。その声に反応したのか、その人物がこちらへとゆっくり振り返る。
その人物は泣いていた。こちらを見て、「ごめんなさい・・・」と呟く。
突然目が開いた。周りを見回す。
其処は何時もと変わりない自分の部屋だった。
・・・夢?澪は自分に問う。
夢・・・だったと結論が出る。
それでも澪は落ち着かなかった。
・・・あれは・・・
「どうしたの?澪」
突然話しかけられる。
澪は自分の隣にいる人物からの問いに答える。
「ああ、ごめん、起こしちゃった?お姉ちゃん」
自分の双子の姉、天倉 繭はそれを否定する。
「ううん、目が覚めたら何だか澪が難しい顔をしていたから・・・どうかしたの?澪」
「うんん・・・ただちょっと変な夢を見ただけ・・・それだけ・・・」
「そう、そうだったの・・・大丈夫よ、夢は夢なんだから・・・さ、起きよ?」
「・・・うん、そうだね」
繭の提案を受け入れ、ベッドから降りて、部屋を出て、階段を下りる。
繭は昔、右足をある事故で怪我をして以来、足に後遺症が残り、自由に動けない。
だから澪は何時も繭のそばにいて、手助けをする。
・・・それが澪にとっての唯一の贖罪の方法と澪は思っている・・・
階段を下り終えると、澪はふと、さっきの夢が気になり、この家の和室に行ってみようと思った。
「お姉ちゃん、ちょっと和室に行ってもいい?」
「・・・?別にいいけど・・・どうかしたの?」
「ううん、大した用事じゃないの、ただちょっと気になって・・・」
そう言って二人は和室に向かった。
Copyright (C) 闇薙帝夜(やみなぎ ていや) 2003